2011/カラー/103分
老兵挽歌
1949年、中国大陸での内戦に敗れた蒋介石と国民党軍、政府要人、その家族たち約200万人が人口600万の台湾に渡ってきた。彼らは台湾の政官界を掌中にし、それ以前から住んでいた人々(本省人)の上に君臨した。彼らは外省人といわれた。200万人のうち60万人が国民党一般兵士だった。
中国大陸で勝利した共産党は「台湾の解放」を、台湾の国民党は、「大陸への反攻」を掲げた。台湾全土に戒厳令がしかれ、自由がなくなった。
その一方、台湾は経済発展を遂げ、蒋介石〜蒋経国の時代を経て、李登輝の時代を迎える頃、民主化が進み、戒厳令もなくなり、国民党以外の政党も合法化された。 他方、中国は、文化大革命の嵐を経て、一党独裁を維持しつつ経済の改革開放に踏み出し、成長が著しい。
60年の歳月が流れる中、台湾に渡った国民党兵士は全て退役した。彼らは「栄誉国民」=栄民と名付けられた。国家は栄民に数々の特典を与えた。外省人たちは、出身部隊ごとに集落を形成。それは眷村と言われ、大陸出身地の言語を使用、一般の台湾社会と一線を画していた。眷村に住む栄民には(妻や子や孫)家族がいた。
しかしその一方で、独り身で余を過ごす元兵士もいる。彼らは「栄民の家」といわれる軍の施設で2人一部屋の集団生活をしている。食堂や映画館やカラオケや麻雀などの娯楽場、売店、病院も完備された元兵士たちだけの棲み家。年齢は、80歳から90歳代。台湾でもタブーとされていた「栄民の家」にカメラが入り、老兵たちの心のうちに迫っていく。
彼らにとって国とは?故郷とは?家族とは?自らの人生とは?
台湾の埋もれゆく歴史を掘り起こすドキュメンタリー。
テーマ音楽 作曲・演奏
彩愛玲(ハーピスト)
祖父は台湾人声楽家。
台湾華僑3世。
協力
中華民国国防部 中華民国行政院国軍退除役官兵輔導委員会 板橋栄誉国民之家 岡山栄誉国民之家 台北栄誉国民之家 国軍歴史文物館 CHINA AIRLINES EVA AIR
後援
台北駐日経済文化代表處 台湾観光協会
取材・撮影
伊藤文美 高良沙葵 市川絵理子 林 雅行
製作助手 本多真子
音響効果 林 恵吾
通訳・翻訳
勝海惠蓮 王昱婷 グラディス・ツァイ アルタン・ジョラ― 荘雅筑
編集・CG制作 高良沙葵
スタジオ・技術協力
ビデオ・フォーカス 東京オフラインセンター
語り 小倉陽子